† 洋館綺譚 †  Chap.1

ここに一枚の古い写真が在ります…色褪せても尚、目を惹く写真が。


…貴方、家族写真だとお思いでしょう?でもね、違うんですよ。

え?あぁ、私はしがない執事です。…いや、正確には「でした」ですな。

はい、御察しの通りかつてこの家に遣えていた者です。

え?この家に何が起きたかお知りになりたいと?それを知る為に来たと…?

一見家族写真に見えるこの一枚…中央に写っているのが、この洋館の当主、アリスお嬢様です。

えぇ、まだ14歳という若さです。世間一般では子供の域ですね。まぁその話は後々…。



次に左右に写っている双子は、お嬢様の遊び相手にと、私共執事やメイドが相談して雇った者です。

はい、年もお嬢様と近く、確か…この頃16位だったと記憶しています。

孤児院から引き取ったのですが、血統は良いのですよ。まぁこの話も後に…えっ?…あぁ、恐らく二卵性だからでしょう‥。



そして手前の下卑た笑いを浮かべているのが下男です。名前?……記憶にありませんが、陰ではハンプティと呼ばれていました。

かの有名なハンプティ・ダンプティ(ずんぐりむっくり)にちなんで、でしょうね。…本当にオツムの回転の悪い男でしたよ。

コイツがお嬢様と一緒に写真に収まる事すら汚らわしい……!


…失礼、つい愚痴っぽくなってしまいました。


最後になりましたが、奥の青年は……アリスお嬢様の主治医です。

…いえ、体の病気では無いのですが……まぁ、彼は人柄も良く、屋敷を訪れる度お嬢様の遊び相手にもなってくれました。

はい、お嬢様も実の妹の様になついていましたよ。



…はい?…えぇ、分かっていますとも、そんなに焦らずとも時間はまたまだございます。私が知っている事は全てお話致しますよ。


それではまず、当主・アリスお嬢様の事をお話しましょうか。弱冠14歳ですが、聡明でいてとてもお美しい方でした…。

ただ御不幸な事に、7歳の誕生日に…御両親を、元の当主様を亡くしてしまったのです…。

どうやら事故との事で、御両親は即死…誕生日のプレゼントを買いに行く矢先の出来事でした。

一人残されたアリスお嬢様は、その事実を駆け付けた叔父に聞かされるやいなや、正装用のベロア地のワンピースに着替え、

父の…当主様の椅子に深く座り、親戚中に言い放ったのです。


「正統な血縁により、今時分から私がこの屋敷の当主となります。皆様の手は煩わせません。早々にお引き取り願います」…と。


貴方も、「まだ10にも満たぬ小娘が何を」とお思いですか?

でも、私達使用人の目には、とてつもなく凛々しく、御立派に、それでいて酷く弱々しく映ったのです。

その日を境に私は、一生を懸けてこの方をお守りしようと決めたのです……。   NEXT→CHAP.2


2004年09月01日

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